一般社団法人日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会
長谷川 幹
相模原障害者殺傷事件から2年経過しました。
日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会は、相模原障害者殺傷事件に関してこれまで学会声明を理事会で検討してきましたが、当学会はさまざまな立場があり統一的な見解を出すのは難しく、遅くなりましたが、それぞれの立場で2か月に1回程度に連載形式で出すことに決めました。
今回は長谷川幹です。
当学会の目的は、「脳損傷の人々並びに市民が同じテーブルにつき、地域において主体的な暮らしの実現及び脳損傷の人々がどのように改善するか等に関して学術研究、知識、技術の向上を目的にすべての人々が双方向に学びあい、その成果を社会に広め、共に生きるコミュニティの発展に寄与すること」であり、障害のある人々と普段から同じテーブルで議論し、行動する、ということを基本にして当学会は活動しています。具体的には、理事会、各委員会、全国大会の実行委員会にできるだけ多くの(目標は全体の1/3)障害のある人々が参画することを目指しています。
今回の相模原障害者殺傷事件は殺傷者個人の問題はもちろんですが、「障害のない人」の中にもさまざまな「障害のある人」に対する「偏見、差別」の考えを問題提起している、多くの論があります。他方「障害のある人」自身からは鋭い言葉が発せられています。「怖くなって一人で外出できない」、「健常者は世界観を健常者の眼差しでしか持っていない」、「生きている!殺すな」などなどです。私は、1993年妻が脳卒中で失語症、右片麻痺になり、退院時に「妻と一緒に歩いていると周囲からどのような視線に会うだろう」との思いが頭をかすめました。
そして、リハビリテーションにかかわる仕事上、さまざまな脳損傷者とのお付き合いがあり、旅行などでともに行動した後さまざまな活動を展開される姿を見るにつけ、「障害のある人」は支援の「受け手」、「障害のない人」は「支え手」という構図から脱却し、「障害のある人」が「支え手」に回ることができるようなきっかけづくりをする。それと同時に、「障害のある人」と日常的に双方向の議論をすることにより、「障害のある人」を理解すると同時に一緒に活躍できる学会を作り上げることを目指したいと考えています。